takashiskiのブログ

覚書の殴り書き

キーキャップへの昇華印刷メモ

以下の記事をみて「へーできるんだー」と思ったら試せる機会ができたのでメモ。

kou014.hateblo.jp

 

昇華印刷は、昇華転写用紙に印刷した画像を、熱と圧力を使ってポリエステルに転写する技術である。

google検索候補上位の昇華印刷に関する記述においては「ポリエステルにしか転写できない」とあるが、何故かPBTは転写ができる。化学は詳しくないのでよくわからない。

PBTでないキーボードのキーキャップにも転写はできなくもない。ただし、発色がよくなる温度が190度くらいだそうなので、その温度+α以下で溶けるような素材だと溶けて変形したり、紙と一体化する。

 

おおまかな手順は以下のとおりである。

  1. 画像を用意する
  2. 画像を左右反転させる
  3. カラープロファイルを普通紙向けインクから昇華転写用紙向けインクのものに変更する
  4. 転写用紙に印刷する
  5. 転写用紙から転写する画像を切り出す
  6. 転写したい素材に印刷面が向くように切り出した転写用紙を置く
  7. 転写用紙を素材に固定する
  8. 素材表面に凹凸があれば、スペーサーを作成し凹凸を可能な限り平坦にする
  9. 転写部に対して、30秒程度、190度の熱源を押し付ける
  10. 熱源を離し、冷ます
  11. 転写用紙を剥がして発色を確認する

 

2,3,4は外注する場合は非反転画像を渡せば先方が何とかしてくれるはず。カラープロファイルは、印刷の宿命である。ディスプレイの発色とも家庭用インクジェットプリンタの発色とも異なるのでカラー印刷をする場合は根気強く調整するしかない。黒系のみであれば関係ない。

めんどくさいのは1と5以降で、特に8,9である。

1の用意する画像に関しては、傾きや位置ずれを防止するために、トンボを付ける必要がある。また、後述の理由により中央より直径8mm程度のみに印刷することが望ましい。

8,9に関しては「転写するためには圧力をかけ、転写用紙と素材を密着させ、一定時間加熱する」という性質によるめんどくささである。一般的なキーキャップの表面は、すり鉢状になっている。つまり、印刷面の高さが一定でない場合に密着しない/十分に圧力がかからない部分が出現し、品質がばらつくということを解決しなくてはならない、ということである。手元にあったキーキャップは角が一番高く、次に辺の中央、そして中央が一番低いくぼんだ形状になっている。角と辺の中央の間で0.5mm, 角と中央の間で1mmほど高さが異なる。

解決策として、耐熱シリコンシートを差し込むことがある。ここで次の問題が発生する。シリコンシートの反発に負けない程度に力を加えなければならないが、専用器具出ない場合は均一に圧力を十分にかけることができない、ということである。 

手持ちアイロンの場合はキーキャップ一個だけに対して加圧加熱しようとした場合に傾いて力を加えている場合がある。この場合、むらが発生する。かといって複数同時に実施したとしても、どちらか一方に偏る可能性がある。

今回厚さ約1mmのスペーサーを利用した。スペーサーの形状と圧力のバランス次第で中央/中央の周辺/角付近という三段階の転写むらが発生した。時間は190度で30秒から1分程度で十分である。加熱時間が長いと、インクが出過ぎてぼやける恐れがある。

私が使ったのは以下のアイロンである。非接触温度計で測温したところ、最高温度に設定することで190度前後になることが確認できた。

 

パナソニック コードリール式スチームアイロン   シルバー NI-R36-S

パナソニック コードリール式スチームアイロン シルバー NI-R36-S

 

 

 

各家庭で実施される場合は、転写むらの確認をするためのテストパターンの印刷と無地キーキャップを多く用意することを推奨したい。

 

書いたほうがよさそうなこと思い出したので加筆した。

 

 

あ、あとUVプリントが最強。冶具と印刷パターンを適切に作れば、分解することなくそのまま表面全体に印刷可能 。ただしプリンターが300万くらいする。